ヒロシコ

 されど低糖質な日日

「食品表示の罠」を検証する

山中裕美さんの『食品表示の罠』を読んだ感想

山中裕美さんの『食品表示の罠』という本を読んだ。スーパーやコンビニで売られている食品に記載されている成分表をつぶさに見ていくと、その裏側に隠された本当の意味や問題点があることがわかってくるよ、という内容の本です。

料理研究家である著者は、だからそういう食品は買っちゃダメだとか、危険だというふうに断罪しているわけではない。なにごとも自分の目で確かめて、まあほどほどにね、と言ってるに過ぎない。なのでそのあたりが物足りないと言えばそうだが、僕は案外面白く読んだ。

なんとなれば、食品ひとつひつに記載されている成分表は、ともすれば見逃されがちだが、じっくり腰を据えて読みといていくと、そこには小説やドキュメンタリーにも決して引けを取らないほどの濃密で油断ならないドラマが隠されていることがわかるからだ。

ことに僕は、糖尿病になり糖質制限をはじめたせいもあるかもしれないが、成分表については以前よりも格段と目を通すクセがついた。これからは糖質やカロリーを調べるだけでなく、この本に書かれているような、成分表示の裏側にも思いを馳せながら見て(読んで)いこうと思う。 

食品表示の罠 (ちくま新書)

食品表示の罠 (ちくま新書)

 

 

本の内容の一部を検証してみることにした

で、ここからが本題。せっかく面白い本を読んだのだから、本書のなかで僕が付箋を貼った項目について、実際にそいう表示がされているのか、現にうちで使っている食品にはどういう表示がなされているのか、何点かピックアップして検証してみることにした。ただ、くれぐれも誤解のないように言っておくが、僕も著者同様、だからもう買わないとか料理に使わないなどと言うつもりはない。

検証と言っても、その成分が正しいものか、含有量に誤りはないのか、という科学的なデータを調べるわけではないですよ。そんなこと僕には出来ないし。スマホでうちにあるメーカーの食品の成分表を写真に撮ってみて、ああなるほどなあ、と確認するだけの単なる暇つぶしを思いついただけ。ただしわざわざ買ってまで、というのはナシというルールにした。

 

1)ベーキングパウダーに含まれるアルミニウム

ケーキを焼くときになどに使うベーキングパウダーには(以下BPとする)、硫酸アルミニウムカリウムという添加物が含まれていることがある。ところがこのアルミニウムは、一時期アルツハイマー病との関連が指摘されたことある。

現在では直接の因果関係はないと言われるが、それでも過剰に摂取すると、血中で他の物質と結合し、脳に悪影響を与える可能性もあるらしいのだ。そこで近ごろでは、BPのパッケージに「アルミニウムフリー(アルミニウムは使ってませんよ)」と謳った製品が出回っているのだそうです。

僕がふだん使うBPは下の2種類のどちらかで、そのどちらにも確かに「アルミニウムフリー」「アルミニウム不使用」と文字があった。こんなところいままで気にしたこともなかった。なお、右側のBPの黄色い丸で囲った部分のすぐ下に見える「ミョウバンを使用していません」というミョウバンは、硫酸アルミニウムカリウムの別名なのだとか。まったく油断がならないというかなんというか。

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2)濃縮還元ジュースの秘密

果汁が10%以上の飲料を「果実飲料」と言うが、これはまた、果汁の種類や含有量によって「果実ジュース」と「果実ミックスジュース」のいわゆる果汁100%ジュースと、「果実入り飲料」などに分類される。

さらに果汁100%ジュースになかでも、添加物がいっさい含まれない「ストレート」タイプと、果汁を濃縮し水で薄めた「濃縮還元」タイプとに分かれ、それを表示する義務があるという。うちの冷蔵庫に眠っていたパックジュースを見ると、「果実ミックスジュース」の「濃縮還元」タイプであることがわかった。だからなんだ、ということですが。

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3)カット野菜に隠された裏側

うちでも便利に使っているカット野菜。いまではスーパーやコンビニで当り前のように売られていますよね。表示は? と見ると、野菜の名前と原産地くらいしか書いていない。だけど著者は、カットした野菜が変色もせずに鮮度をそのまま保つことなどあるだろうかと疑ってみるわけです。

それでわかったことは、加工食品をつくるときは、使われた添加物のうち途中で洗い流されたり完成前に取り除かれたものについては、表示する義務がないそうだ。いったいどんなお風呂に浸かっていたのか。ちなみにうちの冷蔵庫にキープされていたキャベツの千切りは群馬産と茨城産のハーフでした。

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4)チューブ入りの便利な薬味

うちの冷蔵庫の扉のポケットにもあります。チューブ入りにんにく、チューブ入り生姜、チューブ入り辛子、チューブ入りわさび。豚肉の生姜焼きをつくったり、パスタを炒めるときは生の生姜を擦ったりにんにくを剥いてカットしたものを使うが、料理にちょっとしたアクセントをつけたいときはこのチューブ入りをためらいもなく僕は使う。

このチューブに中身を充填するために、もとのにんにくや生姜を流動状にしなければならない。それにでんぷんや油脂などの添加物を加える。そういうのもちゃんと何が使われたのか成分表示で確認できるのだと言う。たしかに。

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5)「遺伝子組み換えではない」という表示

大豆などの決められた品目については、遺伝子組み換えをしたものには一部の例外を除いてその表示の義務がある。一部の例外というのは、作業の工程で偶然混入してしまう5%未満のもののことだ。逆に、「遺伝子組み換えではない」ものについての表示の義務は本来ないはずなのに、各メーカーともこぞって表示して安全性を訴えかけているのが現状なのだそうだ。下はうちの醤油です。組み替えてないのは認めるよ。

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6)わかったようでわからないバターとマーガリンの関係

バターとは、乳脂肪が80%以上含まれてる乳製品でなければならない。そしてこの乳脂肪分を減らして別のカロリーを加え、パンに塗りやすくするためにホイップしたり、香料や酸化防止剤などの添加物を加えたものを「乳または乳製品を主原料とする食品」とする決まりになっている、そうだ。

さらにそのなかに、バターが50%以上含まれていればそのまま「乳または乳製品を主原料とする食品」という表示でいいのだが、それ以下だと、「マーガリン」または「ファットスプレッド」に分類されるという。なんだかややこしくて僕には詳しく理解できない。とりあえずバターといわゆるマーガリンがあったので、比較してみた。

いま、マーガリンなどに含まれるという、動脈硬化を促進する「トランス脂肪酸」というのが盛んに問題になっていますよね。うちで使っているマーガリンには記載がないが、名前を変えてこっそり潜んでいるかもしれないので油断はできない。たとえば「ショートニング」という添加物には、さらに多くのトランス脂肪酸が含まれているそうだからね。

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ちなみに、カミさんが食べる予定かもしれない下の写真のカレーパン(カリ―パン)の成分にショートニングを発見。さらに、この本のなかで危険かもよ、と書いてあった「イーストフード」という添加物の一括表示物質(いろいろな添加物をそういう名前で一括に表示することが許されている)もありますね。ウヒヒ……黙ってよ。

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7)赤穂の塩という表記について

塩は大きく分けて、岩塩というほぼ外国産の塩と、天日塩というまあこれもほとんどが輸入されたものと、国産のせんごう塩とに分類される。で、輸入元だけど、格安のオーストラリアかメキシコが圧倒的なんだそうですよ。

それでね、問題は、というか別にたいした問題でもないかもしれないが、かっこ書きで原産地を正直に記入していれば、なんと、最終加工地の名前を使っても許される仕組みになっているそうなのだ。だから赤穂の塩がそうだというわけではもちろんないが、たとえばうちで使ってる塩の袋を確認したら、「国内製造」(おまけにMade in jJapan)なんてでっかく黒字に白抜きで書いてあって笑った。そして案の定、僕もカミさんも国産の塩だと思って使っていたのだった。

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8)みなさん大好きチョコレート(糖尿病の僕も大好きですが)

チョコレートがチョコレートたり得るためには、バターなどといっしょで、カカオ分が何パーセント以上とか以下だとか細かい決まりがあって、カカオ分が多ければそれだけチョコレート本来の風味があるのだが、例によってコストを抑えるために、この割合を低く抑え、その分、植物油脂を多くしているらしいですね。

まあこのあたりの理屈はわかる。消費者である僕も安価なチョコレートを求めていたわけだし。でも、あらたに増やした植物油脂の割合までの表示義務はないそうだから。それでも注意して見るべき個所はやはり成分表示で、原材料名は多い順に表示される決まりなっているので、直物油脂や砂糖よりもココアバターが先ならそれだけ風味のあるチョコレートという考え方もできるよ、と著者は言ってますね。

ただし、なんでもそうだけど個人の嗜好やジャンクなものが好きな人などさまざまなので、一概にどっちがより本物のチョコレートで他方は別物などとは安易に言うべきでないと僕も思います。ちなみに僕は以前の記事にも書いたように、「チョコレート効果カカオ86%」が糖質的にもギリギリ低くてかつ僕が食べられる限界の甘さなので、それを常用している。 

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ちなみに、たまたまうちにあったカミさんや子どもたちが食べる袋入りの安いチョコレートがすぐ下の写真。砂糖が原材料レースの先頭を走っているのがわかる。

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9)手軽で便利なパックごはん

これ面白いよ。パンクごはんはその作り方で大きく二通りに分けられる。

  • パックに米と水を入れて炊いたごはん
  • 炊いたごはんをあとからパックに詰めたもの

上のは添加物の必要がない。一方、下のはあとからパック詰めする設備や工程の安全性を保つために添加物が必要。それが成分表に「原材料+ph調整剤(あるいはグルコン酸)」と表示されてるはずだと。

これもたまたまうちにいざというときのために買い置いてあった二種類のパックごはんを比べてみたよ。すると偶然、確かにグルコン酸があるのとないのがあった。なるほどねー。

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おわりに

ここまで検証した(というかただ写真を撮って本の内容を確認した)ものは、本書のほんの一部に過ぎない。まだまだいっぱい面白いことが書いてあった。でも疲れたので、興味がある人はあとは本を買うなり図書館で借りるなりして読んでください。買うならこのブログ経由でアマゾンから買ってくれるとうれしいですが。ウヒヒ。

さて、最後にもう一度大切なことを書いておきます。添加物のことを中心に、僕はふざけ半分でこの記事を書きましたが、本当にただちにやめた方がいい危険なものもなかにはあるかもしれないし、それほどでもないものもあるのだと思います。

でもいずれにしても、選ぶのは自分自身。個人の嗜好や、自分や家族の健康、当然経済状況なども考慮して、どれがいいのかどっちがよりベターなのか決めるのはいつもあなた自身だということは忘れないでください。それ食べちゃダメなどと、センセーショナルなことを僕は絶対言うつもりはありません。僕もそうやって、半分真面目に、半分テキトーに選んでこれからも買います。

それにしても成分表、面白くて侮れないなあ、と思いました。