ヒロシコ

 されど低糖質な日日

牛乳石鹸のCMのお父さんがもし西島秀俊さんだったら

こんな辺境ブログへたどりつくみなさんのことだから例の牛乳石鹸のWEBムービーに対する反応の過熱ぶりにはいささかうんざり気味というかはっきり飽きている頃なんでしょうね。 までもいちおう念のためリンク張っときます。

牛乳石鹸 WEBムービー「与えるもの」篇 フルVer.

固形石鹸の需要はボディソープ(液体石鹸)の需要に反し縮小の一途を辿っていたがここへきてまたその人気が回復傾向にあるという。理由は定かでないが自然派志向や原点回帰などという時代の風潮とどこかしらマッチするものがあったのかもしれない。僕はマーケティングの専門家でもなんでもないのでそこらへんのことはよくわからない。わからないが牛乳石鹸はその種の業界にあってマーケティング戦略には定評があったという声も聞いていた。そこへもってきてくだんのCM(WEBムービー)である。このいわゆるネット炎上はマーケティング戦略的に成功だったのかそれとも失敗だったのだろうか。これもしかるべき時期に行われる決算発表を待ってみなければはっきりしたことはわからない。わからないといえばそもそもCMのコンセプト自体がわからないという意見が多く寄せられていることに正直僕は戸惑いもし驚きもした。実際話題になってからはじめてこのCMを見たわけだが「えーっそうなの?!」という感じでした。だってこれほどわかり易いコンセプトも他にないだろうくらいに僕なんかは思ったから。制作者の意図は十分伝わってくる。そもそも父の日に向けてのイメージCMでしょ? お父さんには染みついた汗や垢のほかにも仕事の疲れ悩み生活の疲れ悩みといろんなものがたくさんたくさん溜まっているのだ。この際きれいさっぱり洗い流してもらいましょうよと。ついでにもし父の日の贈り物どうしようか迷っているならお父さんに石鹸贈るなんてどうですかってね。しつこいようだけどあくまで父の日へ向けての戦略だから。お母さんだって同じように汗も垢も仕事の疲れも生活の疲れも溜まってるに違いない。けどとりあえずいまのターゲットは父の日なわけで。お父さんたちへ向けたエールなのは明らかだ。まずそれが大前提。家事や育児は男女平等なんてここでいったってはじまらない。まあ汚れや疲れを牛乳石鹸で洗い流してくださいというのが大きなお世話だとかコンセプト自体気持ち悪いというのならそれはそれでこの話はここで終わりですが。残念ながらそういう人にはCMほんとうに届かなかったんだねとしかいいようがないもの。それにしたって意図がわからないということは(しつこいようだけど)ないんじゃないかなあと思うよ。

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それからCMの具体的な内容についての非難や拒絶反応も多くみられた。いわく子どもの誕生日に飲みに行くなんてありえないとか。奥さんの電話に出ないなんて許せないとか。要冷蔵のケーキ持ったままどうするんだとか(心配性だねえ)。帰宅して奥さんに怒られてるのにそれ無視して風呂入るなんて言語道断だとかね。リアルとCMの見境もなく主人公(新井浩文さん)のキャラクターや行動をいちいち非難したりそれをまた擁護しようとする僕もどうかと思うけど。僕は新井浩文さんの心境わかりすぎるくらいよくわかる。痛いほどにといってもいいくらいに。新井浩文さんの父親と違って僕の父親はけっして「昔気質の頑固な父親」というほどではなかったけれどそれでも後から父親になった僕と比べればはやはり「頑固で昔堅気な人」だった。同年代の他所の父親と僕を比較してどうだったかとはいえない。それは僕が決めることじゃない。が少なくとも僕の父親にくらべれば僕ははるかに家庭的な父親だったと思うなあ。いわゆる「家族思いの優しいパパ」を僕もがんばって演じてきたのだ(過去形なのはもううちの子も大きくなったので)。でもそうやってがんばっているうちにあのときの僕の父親もこんな気持ちだったのだろうかとかこんなときあの人何考えてたんだろうかとかいまの僕ほど家庭を顧みてたかなあとか夜は毎日僕らを家に置いてパチンコ屋に通ってたよなあとかつらつら思い浮かんできたこともたくさんあった。そうしてあれこれ悩んだり迷ったり苦しんだりもした。僕はこんなにがんばってるのに子どもたちはちっともいうこときいてくれない。奥さんは少しも僕のこと理解してくれない。いろいろなことが面倒くさくなっていっそぜんぶ放り出してしまいたくなることもあった。子どもにもついキツく当たったり奥さんと揉めたこともかぞえきれないくらいある。もっともそれは僕の方だけじゃなく奥さんの方にもおなじぶんだけかむしろ僕以上にあっただろうと思う。

家族思いの優しいパパ、時代なのかもしれない。でもそれって正しいのか?

CMの話に戻すと新井浩文さんは自分のなかに湧き上がってくるそういう疑問に対してささやかな抵抗を試みてみたくなったのだろう。わざわざ子どもの誕生日にそれをやるかってことだろうけどむしろ子どもの誕生日だからこそ意味があったのだと僕は思うなあ。約束どおり仕事の休み時間にケーキを買いに走りプレゼントのグローブを選んだにもかかわらずだ。本来ならそのまままっすぐ帰宅するはずだったのにね。仕事でミスして上司に怒られしょげて帰っている後輩の姿をたまたま歩道橋の上から目撃してしまった。ついつい後輩を励まそうと飲みに誘ってしまう。そういうシチュエーションありえないかな? そんなに人格を否定されるほど酷い行動かな? そりゃあ奥さんが憤慨するのはわかるよ。当事者だもの。だって約束したじゃないのって。怒るのも無理ない。そこは構わないのだ。奥さんの気持ちわかるわーまでだったらいいんだけどさ。だけど赤の他人の第三者が新井浩文さんの(まあCMなんですけどねー)人格や行動をこっぴどく詰る権利あるかな? 付き合いで会社の人や取引先の人といっしょにいる席で家族からの電話に出られないことくらいふつうにない? 奥さんに怒られたり問い詰められてもどうにも説明しようがないときやどうせ説明しても理解してもらえないだろうなあと思うときやしょせん弁解にしかならないだろうなあと端からあきらめているときない? ここは無言を貫きとおすしかないだろうなあということってふつうにあると思うけどなあ。そんなときだからこそ説明するのが筋でそれが思いやりや愛情だっていわれたらそれまでだけど。まあでも僕には新井浩文さんを非難するつもりも資格もない。

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新井浩文さんふだんは相応に家事も分担して家庭行事優先に基本賛同しているいい旦那さんでやさしいお父さんなんだろうと思うよ。いままではそれなりにうまくやってきたんだと思う。それがついささやかな抵抗を試みたものの新井浩文さん結果的には後悔してるよね。反省して謝ってる。ま後悔して反省して謝ればなにしても許されるなんていうつもりは毛頭ないけど。でそういうところの新井浩文さんのダメさ加減というかどっちつかずの中途半端さ加減がこのCMにはよく出ていると僕は思ったのだ。新井浩文さんというキャスティングの手柄(石鹸で洗うと新井をかけたのは間違いないだろうし)なのかもしれない。ダメさ加減てうっかりいっちゃったけど人は誰しもが「しくじり先生」だからねえ。上司(先輩)と部下(後輩)。家庭と仕事。時代によって微妙に変化してきたかっこいい父親像。理想的な父親像と現実の自分。かつての自分の父親といまの父親としての自分。などなどいくつもの板挟みに悩みもがき苦しむ新井浩文さんがんばれ! というささやかなエールなのだ。通勤鞄よりはるかに重い葛藤を抱え朝ゴミを出しバスに揺られ会社で働きときには後輩を励まし一日の疲れた体を汗や垢といっしょに風呂に入れば牛乳石鹸はさっぱりと洗い流すそのお手伝いができます。といってもそれですべてがほんとうにリセットされるわけもなく明日もまた同じことのくり返しそうやって毎日が過ぎていく。暮らしとはそういうものなのだから。きっとお母さんにも仕事先での人間関係や理想とする母親像や自分の母親といまの自分とのギャップで悩むことが山のようにあるにちがいない。そんなことくらい容易に想像できる。あるいは子どもにも子どもなりの学校でのいじめ問題・宿題や塾や遊びたい気持ちとの板挟みで親にもいえない悩みがあるにちがいない。製作者はあの父親の行動を否定も肯定もしていない。それよりなによりいちばん大事なことはCMの父親の人格や人間性までを決して否定していないってことだ。あれこれ悩んですったもんだあったけど結果まったくうまくいかなかったよねという。そういう不幸ってちょくちょくあるよねという暖かい眼差しが僕には感じられてよかった。あるいはいまどきのお父さんは僕なんかよりうんと自然に疑問もなくつまりがんばらなくてもごくふつうに「家族思いの優しいパパ」でいられるのかもしれないですね。あるいはそういうお父さんお母さん層からこのCMの新井浩文さんに対する非難が寄せられているのかなあ。もしCMのお父さんが新井浩文さんじゃなくもし( if )だよ(うし cow じゃないよ牛乳石鹸だけにね)もし新井浩文さんじゃなく例えば西島秀俊さんだったら反応はまったく違ったものになったかもしれないなあといまふと思いました。そこは佐々木蔵之介さんでもなんだったら高橋一生さんでもいいんだけど。うんわかるわかるって反応の方が圧倒的大半を占めたかもしれないですね。なんとなくそう思った。あ誤解ないよう書いとくけど新井浩文さんに含むところないから。むしろこれだけ新井浩文さんの行動に非難が集まったってことは新井浩文さんの演技力が素晴らしかったということの裏返しでもある。あついでに書いとくけどじゃあ西島秀俊さんや高橋一生さんの演技力が新井浩文さんより劣るとかそういうことでも絶対違うから(ふ~いったい誰に気を遣ってんだか)。西島秀俊さんが渡辺直美さんと共演している保険のアフラックのCMで西島秀俊さんは給料日は家族で回転寿司食べに行く(外食する)っていう約束を当日家に帰るまですっかり忘れてたわけでしょ。ちなみにCMはこれね。

とある奥さま・楽しい給料日篇

なのに誰もそれについて反応しない。怒らない。あれ西島秀俊さんふつうに真っ直ぐ帰ってきたからよかったもののたまたま会社の仲間に飲み会に誘われたりしてたらアウトだった。西島秀俊さんは運がよかったともいえる。渡辺直美さんは待ちくたびれて怒ったかもしれないものね。というようなことをちょっと考えました。べつに深い意味はなくただそれだけ。最後に牛乳石鹸の人へ僕がいいたいのは(まさか読んでないでしょうけど)あのCMけっして大失敗でもやらかしたわけでももちろんクソ(失礼)でもなんでもないよってことだ。なにごとも声の大きな意見ばかりが必ずしも正義なんかじゃないってことです。にしてもベッキーさんの不倫報道を持ち出すまでもなくつくづく不寛容な時代に僕らは生きてるんだなあと思いますね。がんばれ牛乳石鹸。もう牛乳石鹸なんて買わないなんていわないよ絶対。さ、洗い流そ。 

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