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されど低糖質な日日

~Ⅱ型糖尿病患者である僕のありふれた毎日~

子どもの泣き声がうるさいと隣人に怒鳴られた話なら、かつて僕ら夫婦にだってあり、むしろ僕は逆ギレしたけどね

思い出

www.lili-hack.com

上記リンク先の記事を読んだ。あえて被害にあわれた方(という言い方するけど、あ、ちなみにブログ主の方ね)にはお気の毒という他ないが、もう二十年以上前、僕ら夫婦にも似たような経験があったので、その当時を懐かしく思い出した。まあうちの場合は、警察沙汰にまで発展しなかったのはいま考えると幸いだったのかもしれない。

僕ら夫婦はいわゆるできちゃった婚で、それも正式に籍を入れる前からいっしょに住むことにして安いアパートに部屋を借りた。住みはじめたとき、赤ちゃんはまだカミさんのお腹の中にいた。それから半年後に長男が生まれた。

アパートはふつうの住宅街にあり、そこには僕らも含めてぜんぶで8世帯が暮らしていた。うちは2階への外階段を上がって奥から2つめの部屋。1階の階段のすぐ脇とその隣の部屋に小さな子どもがいる家族が住んでいた他は、あとは夫婦ふたりか独身男性だった。というのは、住みはじめてあとから知ったことです。

生まれたての赤ちゃんは、とにかく泣くのが仕事とばかりに昼夜問わずしょっちゅう泣いている。けれど親がハラハラ心配するほど実際の声にはまだそれほど張りがなく、どちらといえばか細い声で力なく泣いている。そのせいかどうかわからないが、泣き声がうるさいとアパートの他の住人から苦情を受けることは、僕らの場合一度たりともなかった。

もっともわざわ苦情を言って来なかっただけで、周囲はじっと我慢してくれていただけなのかもね。ところがそれから数年たち、長男もある程度成長して保育園に通いはじめるころになると、体の発達に伴い泣き声もずいぶん野太くなり、ふだん喋る声も自然と甲高くなってきた。そればかりか、部屋のなかを自由に走り回ったりもするようになってきた。

僕ら夫婦は、隣室やとくに階下の家族に申し訳なく思って、長男が部屋のなかで走り回ったり大声を出して泣かないようあらゆる点で用心し、子どもにもことあるごとに言って聞かせるようにした。階下の夫婦にはアパートの前でたまに会えば、「いつもうるさくしてすみません」と頭を下げるよう努めていた。

そんなある日、家族3人ではじめてのディズニーランドへ遊びに行き、その日は夜少し遅い時間になって帰宅したのだった。少々疲れ気味だった長男は、帰る途中からぐずりはじめていたが、なんとか宥めながらともかく部屋のなかへ入り、長男を寝かす支度をしていたときのこと、隣人の独身男性がうちの玄関チャイムを鳴らした。

僕が対応に出ると、隣人は、「子どもの声がうるさいのでなんとかしてくれ」とぶっきらぼうに言ってきたのだ。僕はすっかり恐縮してしまい、平身低頭ひたすら申し訳ないと平謝りに謝った。そのときはさすがに夜の22時と遅い時間だったこともあり、これはもう完全に非はうちにあるなあと思ったからね。ディズニーランドでの浮かれ気分も、一瞬で萎んでしまった。

ところが、そんなことがあってからというもの、隣人はことあるごとに「子どもがうるさいのでなんとかしろ」とうちに怒鳴りこんでくるようになった。それでもはじめの数回は、こっちが「まだ小さい子なのですみません、今後気をつけます」と言えば、最後にはウムという納得顔で帰って行ってくれていた。

一度など、とうとう僕が開き直って、「だってしょうがないだろ。まだ言って聞くような歳でもないんだから」と逆ギレ気味に応対すると、隣人の男は、「ああ、まあそりゃそうなのはわかるけどな」と渋々帰って行ったときもあるくらいだ。

でもだからといって承服してくれたわけではもちろんなくて、次に同じように僕が逆ギレしたときは、「おれは仕事が不規則なんだよ。今日みたいにせっかく寝てるときにうるさくて起こされたらたまったもんじゃないんだよな」と強く言い返してきた。もっともだ。話を聞くと隣人はタクシーの運転手だと言った。

その後も同じようなようなことが何度かくり返され、僕らもこれまで以上にいっそう隣人に気を遣うようになった。長男が家のなかで動き回ることに神経過敏になり、ちょっとの騒ぎでも子どもに注意したり叱ったりするようにした。できるだけひっそり、息を殺して、というふうな暮らし。隣人との一件以来、階下の夫婦も気のせいか僕らへの態度がよそよそしくなったように感じた。

それでも小さな子どもってね、基本的に親の思惑や心配事なんてまるでどこ吹く風とばかり気ままに生きてますよね。少なくとも僕らにはそんなふうに映ってました。なんで言うこと訊いてくれないかなあ、と泣きたくなることもしょっちゅうで、一方で、なんといってもまだ年端もゆかない子どもなんだから、しょうがないだろ、そっちが(隣人のこと)ある程度我慢してくれよ、と思うことも正直あったのだ。

はっきりとはよく覚えてないが、まだいまほど近隣住民同士のトラブルや生活騒音をめぐる陰惨な事件が、巷間ニュースを賑わすことも少なかったように記憶している。なので、うちもそういうトラブルに巻き込まれ、子どもに危害でも加えられたらどうしようとか、反対に僕やカミさんの方が耐えられなくなりノイローゼ気味になって事件を起こしてしまう可能性があるとは、あまり本気で考えなかった。そういう恐怖は当時それほどなかったと思う。

ただ、いまさらこじれてしまった隣人とのコミュニケーションを修復するのは不可能だよなあと気に病み、どうしたらこの問題が解決するだろうかと悩み、本気で引っ越しを考えざるをえないような憂うつな毎日だった。実際、休日に不動産屋さんを回って手ごろな物件を探したりもした。そういう日々の煩わしさは少なからずあったなあ。

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まだ若かったし、条件のいい物件に引っ越すお金もなかったし、お金はいまでもないけど、若さゆえの浅はかで傲慢なところが(とくに僕には)あったかもしれない。傲慢さは、いまでもあるか。

まあでも結局、心配した大事の騒ぎには至らず、この一件は案外あっさりと解決したんだけどね。ふふふ……というのは、僕らが僕の田舎へお盆の帰省をしているあいだに、なんと隣人の方がたまらず先に引っ越して行ったのだ。それもアパートからわりとすぐ近くのマンションへ。以後も隣人とは外で偶然出会うこともあったのだが、もちろん無言ですれ違うだけだったけど。

ホント、運がよかったのやらどうやら。ともかく僕ら夫婦がホッと胸を撫で下ろしたのは言うまでもない。これはあとからわかったことだが、やはりアパートのすぐ近くに隣人の兄家族が暮らしており、お互いに行き来できる便利な場所ということで、隣人はもともとそのアパートに部屋を借りていたらしかったのだ。

それに、まあ他にもいろいろ理由があって、ほどなくして僕らもそのとき探して目星をつけていた別のマンションへ引っ越したんだけどさ。で、下の子が生まれたわけだけど、前のアパートよりは多少構造が丈夫だったのと、今度は両隣り階下とも、子持ちの家族だったこともあって、以前ほど気兼ねせずに暮らすことができたのはなによりだった。そこには、下の子が小学校3年になるまで住んだ。

近ごろ、小学校のプールや運動会練習の声や音や音楽がうるさいと苦情をいう人もいるそうですよね。それもあとから越してきたのにもかかわらず。同じようなことは、保育園の建設が進まない理由のひとつにもなっていると聞きます。

世間ではいろいろな事情を抱えて人はその場所に暮らしていて、なかには子どもがあまり好きじゃない人もいれば、うちのかつての隣人のように、不規則な生活リズムや朝晩逆転した生活サイクルの人もいる。いずれもそういう人々の言い分をまるで無視して共同生活というのは成り立たないというのは十分理解できます。

では具体的にどうすればいいのか? 残念ながら僕は有効的な解決策を持ち合わせていませんし、いま現在そのことで困っている方へ適切なアドバイスを送ることもできません。まあなんとかがんばって切り抜けてください、とトラブルの双方へ向けて無責任に言うことしか正直できないんですよね。ひとりで、あるいは夫婦で抱え込まず、可能であれば誰かへ相談してみて、それぞれのケースでいちばん良い解決策を探ってほしいと思います。

うんと時が通りすぎて、僕らみたいに、懐かしい笑い話のひとつにでもなればいいなあと願っています。