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オリンピック女子マラソン福士加代子さんのインタビューは本当に叩かれるほど能天気だったのでしょうか?

考え

リオ・オリンピックもさきほど無事閉幕しましたね。日本の代表選手たちがおおかたの期待を上回るメダル数を獲得してくれたことで、4年後の東京オリンピックに向けてますますこれで拍車がかかることでしょう。閉会式の次期開催都市のPRタイムではマリオに扮した安倍総理も、2020年のその日をマリオ総理で迎える気満々というところでしょうか。

そんな俄かに浮上した総理の(正しくは自民党総裁の)任期延長問題とは別に、他にもあとひとつだけ気になる問題がありました。まずはこれをご覧ください。


リオ 女子マラソン 福士加代子 金メダル取れなかったあ~っ!

リオ五輪の女子マラソンで完走しながらも14位という成績で終わった福士加代子さんのレース後のインタビューです。で、案の定というか予想どおりというか、「金メダル獲れなかった~」という彼女の第一声に対して、能天気すぎるとかヘラヘラしてるとの批判が殺到しているそうです。

正直、「バッカじゃないの?」と呆れますね。彼女の態度に批判的な人は、本当にこの映像を見て、そして彼女の声を実際に聞いたのでしょうか? あとからネットやスポーツ新聞で活字になった記事だけを読んで、そんなふうに判断したのではないかと疑ってしまいます。いったい彼女のどこがヘラヘラして、どこらへんが能天気なのか。逆に教えてほしいくらいです。

福士さん、明らかに泣いてますよねえ。泣いてるじゃん。だって悔しくないわけないじゃないですか。誰よりもいちばん自分自身に期待していた人なんだもの。声に出して涙を流して泣きたくて泣きたくて仕方なかったと思うなあ。この日のためにどれほど苦しい練習をt積み重ねてきたことか。

応援してくれた人やこれまで支えてくれた人に感謝し、なのに成績が思ったほど振るわなかったことに対して謝りたい気持ちでいっぱいだったのではないか。でもそれらを全部抑えて無理に明るく笑顔で振る舞おうとがんばっているふうにしか僕には見えませんけどね。何度もくどいようですが、彼女をバッシングしている人たちは、本当にこの映像を見たのかなあ? 見たのなら、なんでこんなわかりやすい心理を汲み取れないのかなあ。

実は僕はこれまで福士加代子さんに対してあまりいい感情を持っていませんでした。正直いうと苦手でした。それも今回と同じように彼女のこれでの発言に起因するところが大きかったように思います。大言壮語はいいとして、やはり少し品がないかなあと感じていました。なので、リオのマラソンでも特に彼女に注目したわけでも期待していたわけでもなく、公言していた金メダルを逃したことについても、なんら特別な感情をいだくこともなかったのです。

が、あとからこのインタビューを見て、ああ、彼女は彼女なりに一所懸命がんばって、キツイ練習や厳しい選考レースやヤキモキした代表選考過程を乗り越え、その後も多くの目に見えないプレッシャーと闘いながらオリンピックの本番42.195キロを走り抜いたんだなあと思ったら、なんかはじめて彼女の表情、彼女の言葉にもらい泣きしそうになったのです。

大本命と誰もが疑わなかった金メダルを逃し、試合後のインタビューで泣いて謝罪の言葉を口にしたレスリング女子の吉田沙保里さんのような振る舞いが理想なんですかね。他にも見事銅メダルを獲得したにもかかわらず、「悔しい」を連発した柔道選手たちのように。それに対して、「いやいや、そんなことないよ」とやさいい言葉のひとつもかけてあげるという、本来無用な儀式が必要だったのでしょうか?

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だけど、そもそも背負っているものや重さが、個々の選手や各競技団体によっても当たり前のように違うわけだし、まして吉田さんのように国民栄誉賞をもらって、自身オリンピック4連覇がかかって、世界大会連勝記録までかかって、なおかつ日本選手団の主将という重責まで担わされた人と比べても、そもそもあまり意味がないというかね。

確かに吉田沙保里さんの「ごめんなさい」という言葉にはそれ相応の重みがあった。と同時に、図らずもそういう諸々の重みから一瞬にして解放されてしまった彼女の気持ちの崩壊が実際目の前で見て取れるようで、こっちまでどうしていいかオロオロと戸惑いを隠せないようなね。

もっとも、おおかたの日本人と同じように、僕もあんな謝罪の言葉すら全然必要なかったと思います。それほど彼女の実績と今回のオリンピックでの成績とこれまで何年間も彼女が果たしてきた役割は素晴らしかったわけだけど、あの場の彼女からは自然と口をついて出てきた正直な感情だったのでしょうね。

吉田沙保里さんが「ごめんなさい」というのなら、僕はそれを素直に受け取って「なにも謝らなくても……」と言い淀み、彼女が「金メダルでなくて悔しい」と言うのなら、僕らもいっしょになって「やっぱり悔しいなあ」と泣けばいいし、4年後に向けてまだまだ続けると言えばまた期待し応援し、これで現役を退くと言えば「お疲れさま」と労労うだけです。

その点、背負っているものの重さや種類によってはちょっとずつ違うかもしれないが、吉田沙保里さんだろうと福士加代子さんだろうとその他の代表選手たちだろうと、僕らのスタンスはみな同じでなくちゃいけない。卓球男子で初のメダルを獲得した水谷さんの勝利後の自然なガッツポーズにしたってそうだ。あれを誰がなんの権利があって批判できるのか、僕にはさっぱりわかりません。

まして国の税金を使って(オリンピックに)出場してるのに、メダルはおろか入賞さえしないのはけしからん、という議論などはどうあってもおかしいですよね。それを言ったら、この国に暮らしていてこの国の税金を使ってない人なんて存在しないはずですから。そういう人たち自身は、すべからくなにかの分野で目覚ましい結果を残すなり世間の耳目を集める活躍をしているのでしょうか。

それにオリンピック選手って日の丸を背をってるとはいうものの、そもそも我々すべての日本人を代表してあの大会に参加してるわけじゃなく、それぞれの競技の日本人選手を代表してその資格であの晴れやかな場に立っているんでしょ。そこをはき違えて、僕らまでが彼ら彼女らの背中によっこいしょと負ぶさってしまのは、それはやはり違うなあと思いますね。僕らには僕らががんばるべきフィールドがあり、そこで全力を尽くすべきなのだ。

とまあ、そんなふうなことを考えたリオ・オリンピックでした。個人的には、水泳の萩野さん、体操の内村さん、卓球の水谷さん福原愛さん、レスリングの伊調さん、バドミントンダブルスの高橋さん松友さん、テニスの錦織さん、100×4リレーの山縣さん飯塚さん桐生さんケンブリッジさんらの活躍に目を瞠るものがあったなあと思います。あと男子サッカーのグループリーグ敗退は期待していただけにとても残念でした。

ですが、終わってみればいちばん衝撃的だったのが、そのサッカーの決勝トーナメント進出を初戦で粉砕した相手、すったもんだの末見事銅メダルを獲得したナイジェリアチームの監督と19名の選手全員に総額3900万円を支給した高須克弥院長だったという、おまけがついたことでしたね。実を言うと、僕はあの人もどちらかといえば苦手な印象の方が強かったのですが、それにしてもいやはや、すごい人がいるもんだなあ。 

筋と義理を通せば人生はうまくいく

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